2026年は、「026(お風呂)年」。
あらためて“お風呂”という存在に目を向ける、ちょっと楽しいきっかけの年でもあります。
実は、大田区は、23区最多の銭湯数を誇るエリアとして知られています。
現在も約30軒以上(2026年2月時点)の銭湯が営業を続けており、今なお区民の生活の中に自然に溶け込んでいます。
銭湯のかたちは、時代とともに変わってきました。
かつては「家にお風呂がないから行く場所」だった銭湯も、一般家庭に浴室が普及した現在では、ただ体を洗い、湯船につかるだけの場所ではなくなっています。
特にここ数十年で、従来の木造建築から鉄筋コンクリート造のいわゆる「ビル型銭湯」への建て替えが進む中、浴室だけでなく、食事やくつろぎの時間まで楽しめる銭湯も増えてきました
026(お風呂)年は、銭湯を目的に観光してみませんか。
今回は、お風呂に加えて、“+αの楽しみ方”ができる大田区の銭湯をご紹介します.
銭湯で、ピザを焼いている。
そう聞くと、少し意外に感じるかもしれません。
蒲田にある蒲田福の湯は、お風呂とピザを両方楽しめる銭湯です。
現在の福の湯は、2016年4月にリニューアルオープンしました。
蒲田福の湯のはじまりは、戦後まもなく。
もともとは、現店主の岡崎研二さんの祖父が始めた銭湯でした。
老朽化の問題もあり、建て替えをめぐっては簡単ではない時期もあったといいます。
それでも最終的に再建を決めたのは、
「やっぱり、銭湯は街に必要なものだから」という岡崎さんの母親の思いからでした。
当初、岡崎さん自身は銭湯を継ぐつもりはなかったそうです。
飲食の世界で長く働き、ラーメン店で働いていた時期もありました。
「銭湯は、正直今の時代は難しい仕事だと思っていました」
そう振り返りながらも、家族の思いと、街の存在を考えたときに、この場所をもう一度、銭湯として立ち上げる流れに加わっていくことに。
木目を基調とした内装や白を基調とした浴室も、岡崎さん夫婦が建設会社と相談しながらデザインしました。
ピザを出す予定は、最初から決まっていたわけではありません。
建物の設計を進めるなかで、「このスペースなら、ピザが焼けるかもしれない」
そう気づいたことが、きっかけでした。
もともと、店主が一番好きな食べ物はピザ。
アメリカで過ごした幼少期の記憶や、その後に出会ったナポリピッツァの味が、ずっと心に残っていたといいます。
生地はナポリピッツァをベースにしながら、トッピングには日本人に馴染みのある味も取り入れる。
蒲田福の湯ならではのピザが、こうして生まれました。
テイクアウトも出来ますが、やはりその場で食べるのが一番。
「焼き上がってから90秒以内に食べてもらえるのが、一番おいしいんです」
色々なピザがありますが、中でもオススメだというのが「アメリカン」。
サクッとした生地に濃厚なソースとチーズが口いっぱいに広がります。
定番の「マルゲリータ」もソースとチーズとバジルの相性が抜群。
生地やソースなどほとんどが岡崎さんの手作りだといいます。
SとLの2種類のサイズがあり、Lサイズはハーフ&ハーフでの注文も可能です。
ピザの販売は土日と祝日の17時~21時のみ。ピザだけを買いに来る人もいれば、家族で風呂に入り、そのまま一枚を分け合う人もいます。
「お風呂に入らなくても、ピザだけ買っても大丈夫ですよ」
そう言い切れるのも、もっと気軽な場所にしたいという思いがあるからです。
お風呂も、ピザも、どちらも“あたたかく”。
蒲田福の湯は、お風呂の時間をいつもよりちょっと楽しく、心を豊かにしてくれる場所です。
所在地:大田区蒲田1-12-15
アクセス:JR京浜東北線、東急池上線・多摩川線「蒲田」駅から徒歩12分
TEL:03-3732-1245
営業時間:15:30~24:30 ビザ提供時間 土曜、日曜、祝日17:00~21:00 ※無くなり次第終了(木曜日定休)
https://www.1010.or.jp/map/item/item-cnt-441
蒲田駅からほど近く。
ビルの中に、少し意外な空間が広がっています。
天然黒湯の露天風呂にサウナ。
そして、風呂上がりにそのまま立ち寄れる宴会場。
ゆ〜シティー蒲田は、お風呂の時間を起点に、さまざまな過ごし方が広がる場所です。
創業は、およそ100年前。
平成6年(1994年)の建替えにあたって、黒湯を掘削し、宴会場を併設したのは
「ちょっとした目玉が欲しかったという発想からだった」と話すのは、四代目の中村康太郎さん。
ゆ〜シティー蒲田のお風呂の特徴は、天然温泉・黒湯です。
地下120メートルから汲み上げた黒湯は全国的にも珍しく、他県の温泉地から訪れる人もいるといいます。
平日の昼は、近所の年配の常連さん。
夜になると、仕事帰りの人や若いサウナ利用者。
土日には、家族連れの姿も増えてきます。
もうひとつの特徴が、併設されたYCKホールです。
カラオケは1曲100円。
ステージに立って歌うこともでき、
演歌歌手やアイドルによるライブが行われる日もあります。
その日の出演者や時間帯によって、ホールの空気はがらりと変わり、
訪れるたびに違った楽しみ方ができるのも魅力です。
飲食メニューも充実しており、なかでも人気なのが「唐揚げ」と「生ビールと餃子のセット」。
サウナでしっかり汗をかき、黒湯で体を温めたあとに飲む一杯は、まさに格別です。
唐揚げも一つひとつ大きく中はジューシーで、しっかり食べ応えがあります。
餃子も肉汁たっぷりでビールとの相性は抜群。
「お風呂のあとに、もう少しここにいたくなる」理由が、自然と揃っています。
そんなゆ〜シティー蒲田が大切にしているのは、お客さんの声を聞くことです。
入口の一角にある掲示やノートも、常連さんたちが自然に整えてくれたものだといいます。
「やってほしい、と言われたことは、できる範囲で反映するようにしています」
中村さんのその言葉どおり、ここには“利用する人たちと一緒につくられてきた場所”ならではの空気があります。
ゆ〜シティー蒲田は、時代とともに変化を続けながら、今も多くの人に愛され続けています。
所在地:東京都大田区蒲田1-26-16
アクセス:JR京浜東北線、東急池上線・多摩川線「蒲田」駅から徒歩5分
TEL:03-5711-1126
営業時間:浴場11:00−24:00(火曜日定休)、YCKホール 平日12:00〜21:00土日祝12:00〜21:30(月曜日・火曜日定休 ※月曜が祝日の場合は営業)
「今日は、ちょっと早起きして銭湯へ」
そんな休日の過ごし方が出来るのが、南蒲田にある天神湯です。
昭和27年(1952年)創業。
地域の人たちの日常にそっと寄り添いながら、長く親しまれてきました。
天神湯の大きな特徴は、日替わりで男女が入れ替わる浴室にあります。
1階には、ブラックシリカを使った、やわらかな湯あたりのお風呂があります。
体の芯までじんわり温まり、思わず深呼吸したくなるような心地よさで、女性にも人気とのこと。
一方、3階の浴室には、空を見上げながら入れる露天風呂が用意されています。
天気のいい日は、湯船に浸かりながら青空を仰ぐこともでき、同じ銭湯とは思えないほど、まったく違う表情を楽しめます。
「同じじゃ、面白くないじゃない?」
そう笑うのは、三代目を支える大友ルミさんです。
設計を決めたのは先代だといいますが、その遊び心はいまも銭湯のあちこちに残っています。
どこか異国を思わせるデザインも、そのひとつです。
天神湯が大切にしているのは、とてもシンプルなことです。
「普通に、リラックスしていってくれればいいんです」と大友さん。
来てみると不思議と長居してしまいます。
歩いて来る近所の人、自転車で訪れる人、家族連れ。
どんな方でも気軽に立ち寄れるよう、9台の駐車場(1台は軽自動車用)があり、2時間まで無料なのも嬉しいポイントです。
週末を中心に営業する2階の食堂はお風呂のあとの楽しみ。
定番は、昔懐かしい味わいの醤油ラーメン。
湯でしっかり温まった体に、シンプルで素朴な一杯がすっとしみわたります。
派手さはありませんが、なぜかまた食べたくなる味です。
さらに、かき氷も一年を通して提供されており、季節を問わず、子どもたちにも人気。
シロップはなんと、イチゴ、メロン、レモン、抹茶、コーラ、マンゴー、ピーチ、オレンジ、グレープ、ハワイアンブルー、紅茶、イチゴミルク、メロンミルク、と13種類。
冬でも迷わずかき氷を選ぶ姿に、思わず頬がゆるみます。
日曜日は朝9時から営業。
湯に浸かり、ラーメンを食べて、ゆっくりと一日を始める。
そんな贅沢で、でもどこか日常的な時間の使い方ができるのも、天神湯ならではです。
所在地:大田区南蒲田1-7-23
アクセス:京急線「京急蒲田」駅から徒歩6分
TEL:03-3731-7069
営業時間:平日14:00~24:00 土曜、祝日12:00~24:00 日曜9:00~24:00(木曜日定休) 食堂営業は土曜、日曜、祝日
https://www.instagram.com/kamata_tenjinyu/
ピザを食べる銭湯。
歌える銭湯。
朝からラーメンを楽しめる銭湯。
大田区の銭湯には、それぞれに違った個性と、続いてきた理由があります。
026(お風呂)年。
今年はぜひ、銭湯を“目的地”にして、まちを歩いてみてください。
きっとそこには、お風呂の先にある、ちょっと楽しい時間が待っています。
大田観光協会は過去に「黒湯」特集記事もアップしています。
読みごたえのある記事ですので是非チェックしてみてくださいね。
https://www.o-2.jp/feature/kuroyusento/
本記事のライター:野江泰介
プロフィール:東京都大田区の中小企業診断士・一級建築士。高校生から取材・執筆活動に携わりインタビュー記事を執筆中。仕事を頑張り、楽しむ人を応援。
監修:NPO法人大森まちづくりカフェ
「大森まちづくりカフェ」は情報紙の発行や地域密着型のイベント企画など、まちの魅力を発見し伝える事業を通じて、大森がもっといきいきするような交流の場(=カフェ)の構築を目指すNPO法人です。