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  • 2023.9.29
  • グルメ観光コース

勝海舟ってどんな人? 知識ほぼゼロで「勝海舟記念館」に行ってみた

学校で歴史の授業は受けてきたけれど、今ではほとんど内容を覚えていない……。そんなふうに思ったことはありませんか? 私自身、学生時代はテスト前に教科書を丸暗記するだけで、日本史の魅力を知らずに大人になってしまったことに、少し寂しさを感じていました。

そんなとき耳にしたのが、歴史上の偉人「勝海舟」が、大田区南千束エリアにある「洗足池」と縁があるというということ。しかも勝海舟は、今年で生誕200年を迎えたらしいんです!

この機会に、勝海舟について学んでみたい! そうすれば日本史の魅力にも何か気付きが得られるのでは?と思い、洗足池駅のほど近くにある「勝海舟記念館」へ向かいました。そして、彼の好物から着想を得たというご当地グルメを目当てに「Boulangerie Towaie(ブーランジェリー トワイエ)」というパン屋も訪れてみました。

日本の未来を切り開いた勝海舟と洗足池との繋がりに注目しながら、その魅力的な人物像を紐解いていきましょう。

「洗足池」駅から徒歩6分! 勝海舟記念館に到着

勝海舟記念館は、東急電鉄池上線の洗足池駅が最寄り駅だとインターネットの情報で知り、さっそく洗足池駅に向かいました。

そして洗足池駅に到着。改札を出て、目の前にある横断歩道を渡ったところには、駅名の由来となった「洗足池」が! 池のほとりにある「洗足池ボートハウス」では、手漕ぎボートやスワンボートをレンタルできるようで、カップルや家族で賑わいを見せています。

駅周辺には、豊かな自然に囲まれた閑静な住宅街が広がっており、目的地である勝海舟記念館に向かって歩いているだけでも癒される~!

五反田駅から電車で10分程度というアクセスの良い立地でありながら、落ち着いた暮らしが楽しめそうで、思わず洗足池駅付近での暮らしを妄想してしまいました。

マップを頼りに住宅街を進んでいくと、モダンな雰囲気の建物が見えてきましたよ!

こちらが「勝海舟記念館」。かつて勝海舟の別荘があった土地近くに建てられた「旧清明文庫(きゅうせいめいぶんこ)」を保存、活用してできた建物だそう。

ヨーロッパ建築を思わせるネオゴシックスタイルの外観にロマンを感じます。中はどのようになっているのでしょうか。さっそく入っていきましょう!

自動ドアが開いた先にある吹き抜けの通路では、勝海舟の若き日を描いた等身大パネル(下の写真手前)がお出迎えしてくれました。

初めて勝海舟の顔をまじまじと見ると、歴史の教科書で見たときよりもずっとカッコよく見えてきます。

勝海舟記念館を見学開始! まず「海舟ブレイン」で勝海舟の名言を学ぶ

学芸員さんの案内で、さっそく1階の展示室へ。こちらの展示室では、勝海舟の生涯を貴重な資料と共にたどることができるのだとか。

展示室に入ってみると、部屋の中心に「海舟ブレイン」という展示を発見! どうやら白い壁に映し出された映像で、勝海舟が生前残した言葉や文章を読むことができるようです。

幕末という日本の過渡期を間近で見ながら、その変化を引っ張ってきた彼は時代の証人として、たくさんの人に意見を求められたのだそう。

明治時代にはすでに、本や新聞に勝海舟の言葉がたびたび載っていたと知り、彼がどれだけ頼られていたのかを実感しました。

写真に写っているこちらの名言は、勝海舟がアメリカから帰国した際に重役が揃う会議の場で「日本とアメリカはどう違った?」と聞かれたときの言葉。

質問に対して勝海舟は「(アメリカでは)およそ人の上に立つものは、みなその地位相応に怜悧(れいり。賢いこと)で御座います」と答えたのだとか。

目上の人に対して、そんなことを平然と言ってのける勝海舟。この言葉を読むだけでも、「やっぱり、ただ者ではないな」と感じられます。

ぐるっと一周するだけで勝海舟の生涯を学べる「海舟クロニクル」

年表や実物展示、説明資料などをもとに、彼の波乱万丈な人生を学ぶことができるのが「海舟クロニクル」。

まず驚いたのが、勝海舟が思ったよりも長生きだったこと。今より平均寿命が短かった当時に対し、彼は77歳でその生涯を終えたのだとか。

年表からは彼が晩年に至るまで多くの人に慕われていたことがわかり、人望と生命力に恵まれた人物だったことがうかがえます。

年表をたどっていくと、勝海舟と洗足池の繋がりも見えてきました。勝海舟が洗足池に初めて訪れたのが、かの有名な「江戸無血開城」の時期。

1868年、新政府軍が江戸に進軍した際、勝海舟は薩摩藩邸の西郷隆盛と話し合い、江戸総攻撃を回避させました。

その後、勝海舟は西郷隆盛と共に江戸城の明渡しなどについて話し合うために、新政府軍の待つ池上本門寺へ向かい、その途中洗足池を経由したのだとか。

洗足池付近の風景を見た彼は、1891年に「洗足軒」といわれる別荘をかまえ、時折訪れていたそうです。

年表の他にも、勝海舟にまつわる展示物がたくさん並んでいます。私が特に注目したのが、勝海舟が実際に使っていた航海用具。

今まで歴史上の人物という認識しかなかったものの、実際に彼が触れていた道具が目の前にあると思うと、私と同じ世界で生きていた一人の人間なんだなと実感しました。

今回の展示は道具に関する資料が多かったのですが、勝海舟記念館の展示は1年間に3~4回入れ替わるそう。訪れる時期によって異なる展示を見られると聞くと、全展示をコンプリートしたくなりますよね!

大迫力のCG映像で勝海舟の大航海を体感できる「時の部屋」

「航海用具以外にも、勝海舟の渡米にまつわる展示がある」と案内してもらったのが、「時の部屋」という展示室。小さな部屋に入っていくと、壁3面が大型スクリーンになっており、CG映像が映し出されます。

勝海舟が渡米したときの様子を大迫力のCG映像とともに学ぶことができ、手の込んだ演出に思わず息を呑んでしまいました。

大海原を進む咸臨丸の様子を再現したCG映像を見ていると、まるで自分自身も勝海舟と一緒に航海をしているかのよう。荒れ狂う海を乗り越えて、アメリカまで渡るなんて、考えただけで恐ろしいです……

ファン待望の特別展では「勝海舟の家族」に出会える

続いて進んで行った先では、勝海舟生誕200年記念特別展「家族と歩んだ明治 海舟書屋へのいざない」が開催されていました!

こちらは勝海舟記念館に訪れたファンの方々から「勝海舟の家族について知りたい」という要望が寄せられ、実現した展示なのだそう。

展示されている「海舟の自邸・赤坂氷川邸の図面」や「川村清雄が描いた海舟の親族の肖像画」は、勝海舟生誕200年を前にして開催されたクラウドファンディングで集まったご支援によって、展示できる状態にまで修復できたのだとか。

海舟の自邸・赤坂氷川邸での暮らしの様子や、資料の修復の様子まで細かく見ることができる特別展。勝海舟記念館とそのファンが二人三脚で作り上げた展示だということが伝わってきて、感動しました。

家の天井板を割って薪の代わりに!? 貧しい生い立ちを知る

1階の展示を見終わったら、次は順路に沿って2階へ。アールデコ調にデザインされた内装が素敵です。

ふと足元を見てみると、床に敷き詰められたタイルもレトロでかわいい!

階段をゆっくり上がっていくと、勝海舟の胸像が現れます。精悍な顔立ちからは、歴史を背負ってきた人物の迫力が伝わってきますね。

かつて講堂として使われていた2階の部屋では、大型モニターで映像展示を見ることができるんです。

学芸員さんからは、勝海舟が貧しい生い立ちであったことを教えてもらいました。かつてはあまりの貧しさに、家の天井板を割って薪の代わりにしたことすらあったのだとか……。ちょっと意外です。

そんな彼は、「蘭学」との出会いによって学問の道に目覚めたといわれています。壮絶な幼少期を乗り越えて、学問によって人生を切り開くという話には胸が熱くなりました。

ミュージアムショップで、勝海舟記念館限定のグッズをチェック!

帰り際に、出入り口のすぐそばにあるミュージアムショップに立ち寄ると、ここでしか買えない限定ミュージアムグッズが販売されていました!
たくさんのグッズのなかでも、勝海舟の無血開城にちなんだ「無血絆創膏」(100円)が特に人気なのだそう。「無血」という字にインパクトがあり、なんだか傷がすぐに治りそうな感じがします(笑)。

その他にも、パッケージに勝海舟が描かれた「勝茶マグカップ用」(300円)や、勝海舟の名言が書かれた「〈海舟名言入り〉五角鉛筆」(各130円)など、魅力的なグッズばかり。どれをお土産にしようかな~。

大田区立勝海舟記念館

所在地:東京都大田区南千束2-3-1
アクセス:東急池上線「洗足池」駅から徒歩6分
TEL:03-6425-7608
https://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/hakubutsukan/katsu_kinenkan/index.html

記念館の裏には「勝海舟夫妻の墓」と「南洲留魂詩碑」

勝海舟記念館を見終えてから、記念館の裏にある洗足池公園も訪れてみました。地域の子どもたちの元気な声で賑わう公園を進んでいくと、見えてきたのは「勝海舟夫妻の墓」です。

妻・民子(たみこ)は当初、青山墓地に葬られたそうですが、現在はこうして2人並んで洗足池の畔で眠っています。

生誕200年を迎えた今でも、のどかな公園に囲まれて、彼らはこの地を見守ってくれているのかもしれません。

そして、勝海舟夫妻の墓のすぐ隣にあるのが「西郷南洲留魂詩碑(さいごうなんしゅうりゅうこんしひ)」。南洲とは、西郷隆盛のことです。

江戸無血開城をきっかけに信頼関係を築いたという勝海舟と西郷隆盛ですが、勝海舟はそんな友の死を悼み、実費で南洲留魂詩碑を建てたのだそう。2人の熱い絆が感じられるスポットです。

勝海舟に思いを馳せながら眺める洗足池は、以前とは違った趣を感じさせてくれます。記念館の学芸員さんいわく、勝海舟は老後、度々赤坂氷川の自邸から離れて洗足軒で友人と集まり、和歌を作るなどして楽しんでいたのだそう。

今もなお地域住民から愛される洗足池の自然豊かで穏やかな様子を見ると、たくさんの人から慕われ、国の要人として意見を求められ続けた彼にとって、洗足軒はそんな喧騒から離れられる憩いの場だったのかもしれません。

「Boulangerie Towaie(ブーランジェリー トワイエ)」の勝バーガー

勝海舟について学び終えると、ちょっと小腹が空いてきました。洗足池駅のすぐ近くに、勝海舟にまつわるご当地グルメが売っているというパン屋さんがあると聞きつけて、「Boulangerie Towaie(ブーランジェリー トワイエ)」へ!

ピンクのチェック柄がかわいいお店の看板を見つけました! 扉を開けようとすると、足元に「名物 勝バーガー」の文字が。どうやら、こちらが噂のグルメのようです。

お店に入った瞬間から、香ばしいパンの匂いが漂ってきて、一気に食欲が刺激されます。棚にはたくさんの種類のパンが並んでいます。

店内には幅広い年齢層のお客さんが訪れ、どのパンを買うか真剣に選んでいる様子。私はおいしそうなパンを目の前に、思わずよだれが出そうなのをガマン。

パンの置かれた棚に、「勝バーガー」を発見! 勝海舟のイラストと共に書かれた商品の説明には、「うなぎの蒲焼」をイメージしていると書かれていますが、一体どんなお味なのでしょうか……?

名物「勝バーガー」をいただきます!

それでは、テイクアウトした「勝バーガー」(420円)をいただきましょう! 手に取ってみると、どっしりとしたボリュームが伝わってきて、期待が高まる!

さっそくかじりついてみると、自家製の分厚いロース豚カツとんかつにたっぷりと染み込んだ甘じょっぱい蒲焼のタレの味とマヨネーズと、山椒の風味が口の中に広がる、ちょっと大人な味付け。

モチモチのパンとキャベツとレタスの食感も相まって、夢中になって食べてしまいました。

パンの上には、勝海舟を表す「勝」の字が焼印されていて、インパクト大。店主さんにお話を聞いてみると、勝海舟の縁の地である洗足池だからこそ、せっかくならお客さんに喜んでもらえるような名物グルメを作りたいと考案したのが、「勝バーガー」だったのだそうです。

勝海舟の好物だったという「うなぎの蒲焼」から着想を得て、タレの味にぴったりな山椒を加えたという「勝バーガー」は子どもから大人まで大人気の商品なのだとか。

「幸せな香りがするパン屋さん」をモットーに営業しているというBoulangerie Towaie(ブーランジェリー トワイエ)の地域愛を感じる逸品でした。

Boulangerie Towaie(ブーランジェリー トワイエ)

所在地:東京都大田区上池台2-30-1
アクセス:東急池上線「洗足池」駅から徒歩およそ1分
TEL:03-6421-8825
http://www.towaie.co.jp/

洗足池を中心に、勝海舟の生き様に触れたり、自然豊かな公園で癒やされたり、おいしい勝バーガーを食べたりしているうちに、明日からも頑張る活力をもらうことができました!

歴史上の人物というと難しそうに感じる方もいるかもしれませんが、その人生を辿れば、私たちと同じように苦悩し、懸命に生きた人物像が見えてきます。今回の見学で、歴史の魅力もわかってきた気がします。私も勝海舟のように、努力を重ね、逆境に負けない人でありたいと思える貴重な経験でした。

勝海舟のことをもっと知りたいという方は、ぜひ勝海舟記念館や洗足池エリアを訪れてみてください!

本記事のライター:目次ほたる

プロフィール:
海外旅行も未経験な旅初心者。取材をきっかけに旅の魅力を知り、まずは国内旅行を楽しむために、身近な地域から行ったことのない都道府県まで、魅力的なスポットをリサーチ中。

着物や茶道をはじめとした日本文化が大好きで、歴史を感じる町並みを訪れるのが趣味。そのため、休日はカメラを持って古き良き街を散策したり、美術館や博物館を巡っている。

現在は、都内でフリーランスライターをやっており、取材記事やインタビュー記事を中心に執筆。大田区の好きな駅は、東急池上線の池上駅。

監修:松本里美/三好順