2026年6月12日、大森駅は開業から150年を迎えます。実は、大森駅の歴史は全国の駅のなかでも特に古く、駅周辺には地域と鉄道の関わりを示す跡が残っています。
この記事では、150年の移り変わりをたどりながら散策できる「大森さんぽスポット」をご紹介します。ドラマの撮影地としても有名な純喫茶や、大森発のクラフトビールが楽しめるご当地ビアバーなど、地元の魅力もあわせてご紹介しますのでぜひチェックしてくださいね!
※2026年5月時点の情報です。

日本初の鉄道は、明治5年(1872年)に新橋〜横浜間で開通しました。大森駅が開業したのは、それからわずか4年後の明治9年(1876年)6月12日のことです。
あの東京駅でさえ大正3年(1914年)の開業ですから、大森駅がいかに時代の先端にあったかが伝わってきます。
「明治9年って、どんな出来事があった年なんだろう?」
ふと調べてみると、なんと「廃刀令(帯刀禁止令)」が出された年。びっくり!武士の時代が幕を下ろし、日本が近代国家へと歩みはじめた転換期に、大森駅は産声をあげたのですね。


大森さんぽのスタートは、JR京浜東北線・大森駅のホームから。まずは、ホーム内にある「日本考古学発祥の地」の碑を探してみましょう。
明治10年(1877年)、アメリカ人の動物学者エドワード・S・モース博士が来日しました。横浜から新橋へ向かう汽車に乗っていた博士は、大森駅を通過中、とある光景に息をのみました。車窓から見えた崖に、白い貝が積み重なる「貝層」があることに気づいたのです。
「これは、貝塚だ!」
博士はこれまでの経験から、この貝が何を意味するのかを一目で見抜きました。
モース博士の発見をきっかけに、日本で初めての科学的な発掘調査が大森で行われました。大森貝塚が「日本考古学発祥の地」と呼ばれる所以は、ここにあります。



大森駅中央改札をでたら、正面にあるコンビニ「NewDaysミニ大森1号」にレッツゴー!
大森駅開業150年記念の限定グッズや、記念ビール3種「いつものとおり」「ジャーマン通りヴァイツェン」「桜新道ベリーベルジャン」を買うことができます。
大森貝塚と鉄道の歴史をモチーフとする「大森駅開業150年記念ロゴ」は、なんとプロのデザイナーではなく、JRの社員さんが手がけたものなのだそうです。


大森駅第64代駅長の長堀紀子さんは記念グッズの開発に企画から携わり、お気に入りのグッズはボールペンとのこと。
地域のイベントなどに参加し、地域との交流を重ねてこられた長堀駅長は、「大森の皆さんは地域を大切にされており、大森駅開業150年を楽しみにしてくださっている方が大勢いらっしゃいます。限定グッズはオンライン販売しておらず、購入できるのは大森駅のNewDays(改札外のミニ大森1号)のみ。大森に足を運んでいただくきっかけになれば嬉しいです!」

大森駅西口を出て池上通りを渡り、天祖神社脇の階段を登ると、今は閑静な住宅街が広がっています。明治時代、このエリアには「八景園」という東京近郊有数の遊園地がありました。明治17年(1884年)に開園、広さは約3万3,000㎡。梅の名所として知られ、料亭も併設された当時の名所だったといいます。
当時の大森は海に近く、別荘地としても人気で、さらに海苔の名産地でもありました。ハイカラな鉄道に乗って多くの人が訪れる、「東京近郊のリゾート地」のような存在だったようです。
そんな八景園の風景を歌った歌が、今も残っています。
明治時代、新橋から神戸までの東海道線の沿線駅を歌う大ヒットソング「鉄道唱歌」第1集「東海道篇」です。全66番中、第4番にはこんな歌詞があります。
「梅に名をえし 大森を すぐれば早も 川崎の…」
汽車の窓から見える梅の高台は、当時の誰もが知る大森の風景だったのですね。

西口から駅構内を抜けて東口の駅前広場へと進むと、2つのモニュメントが、歴史を伝え続けています。


ひとつは、「鐵道院鉄柱(てつどういんてっちゅう)」。
鐵道院は、明治後期に日本の国有鉄道を管理していた国家機関で、現代でいえば、鉄道事業者と鉄道行政の両方を一手に担っていたような存在です。

もうひとつは、「海苔養殖業発祥の地」記念碑。海苔を天日乾燥する「枠干し(わくぼし)」を、ほぼ原寸大で再現したものです。
江戸時代中期、大森から品川にかけての沿岸で日本初の本格的な海苔養殖が始まり、ここで培われた技術はやがて全国へと広がっていきました。
昭和37年(1962年)、東京オリンピックに向けた港湾整備のため漁業権が放棄され、翌年の収穫を最後に、約300年続いた大森の海苔養殖は幕を閉じます。
今も大森駅周辺には約50軒の海苔問屋が集まり、海苔流通を担っています。

さて、大森駅東口のMilpa(ミルパ)大森銀座商店街のアーケードの入り口をすぐ右に曲がり、1分ほど歩くと、純喫茶「珈琲亭ルアン」がみえてきます。
地域からも愛され、ドラマや映画の撮影場所でも多数利用されているルアンは大森を代表する店といっても過言ではありません。
ドアを開くと・・・・ 気分は昭和にタイムトリップ!

BGMはクラシック。この空間を優雅と呼ばずして、いったい何を優雅と呼びましょうか。

名物のカフェオレは、目の前でサーブしていただけます。

「チリリリリーン」と鳴るダイヤル式の電話は、今も現役。

朗らかな表情が素敵なオーナー・宮沢孝昌さんに、今は亡きお父様がこのお店をオープンした頃についてお聞きしました。
昭和46年(1971年)、お父様が知人から店を引き継ぐ流れでルアンをオープンした頃。
「当時、現在の店の入り口は立ち食いうどん屋で、2階は麻雀屋だったんです」
え——?! イメージとずいぶん違いました。
「父が店を構えるにあたり、私は小学校に上がる前に大森に引っ越してきました。店の周辺は映画館4軒、パチンコ屋がずらりと並ぶ歓楽街で、『ずいぶんと賑やかな町だな』って驚いた記憶があります」。
その後、お父様は「コーヒー専門店をやりたい」と一念発起。数年かけてうどん屋と麻雀屋を引き払い、店内を改装。現在のルアンの形が出来上がりました。

時代は移り、2020年に全面禁煙を余儀なくされたことで、一時は客足が大きく落ち込んだ時期もありました。
それでも昭和レトロブームが追い風となり、今や、ルアンは昭和のノスタルジーを今に伝える貴重な純喫茶として広く知られる存在に。
ドラマや映画の撮影地としてもたびたび使われ、お店で撮影した俳優やアーティストのファンが「聖地巡礼」として訪れるようになりました。
「それぞれのお客さまにとって、居心地の良い場所になれたら嬉しいなと思います」(宮沢さん)

モーニングは13時まで、ドリンク代にプラス100円でトーストとゆで卵をいただけます。
店内にて、このモーニングをモチーフとする「可愛らしいグッズ」が購入可能です。ぜひ探してみてくださいね!
珈琲亭ルアン住所:東京都大田区大森北1-36-2 |


珈琲亭ルアンから徒歩1-2分ほど足を伸ばすと、蒸気機関車が展示された入新井西公園に到着です。
展示されているのは「貴婦人」の愛称をもつC57形66号機。毎日正午と15時には動輪が5分間動き、汽笛音を楽しめるスポットです。また、運転室と炭水車の一部が開放されています。
なぜ大森のこの公園に展示されているのか。そのきっかけは、地域住民の鉄道への想いでした。
鉄道の電化が進み、蒸気機関車の廃止に向かっていた時代のこと。
住民から「地域にとってなじみ深い蒸気機関車を、ぜひ保存してほしい」という声が高まり、区は廃車予定の蒸気機関車を国鉄(現在のJR)から借り受け、青少年の教育と育成のため永らく保存すると決めたそうです。
昭和49年(1974年)には同公園内で蒸気機関車公開記念式典が開催されました。
入新井西公園住所:大田区大森北1-39-1 |

「なんでここだけ、道がカーブしているんだろう?」
大森駅東口をでて右手に1-2分進んだエリア(大森北1丁目5番地付近)には、不自然に湾曲した道がいくつかあります。実はこれ、明治時代にこの地を走っていた電車の名残といわれています。
現在のJR大森駅と京急の大森海岸駅は700mほど離れていますが、明治34年〜昭和12年にかけて、この区間には小さな電車が走っていました。現在の京浜急行電鉄の前身、京浜電気鉄道です。
当時の電車は屋根の「トロリーポール」で架線から電気を取っており、終点で折り返すたびに、このポールを進行方向に合わせて付け替える手間がかかりました。
そこで大森駅前では、電車がぐるりと一周してそのまま戻れるテニスラケットのような形の「ループ線」が作られたようです。

現在のイトーヨーカドー大森店のそばには、当時の電車の敷石が残されています。


大森さんぽの最後に、ご当地クラフトビールはいかが?
大森山王ブルワリーが運営するビアバー「東京∞景(とうきょうはっけい)」は、大森駅西口から徒歩1分ほどの場所にあります。
大森駅開業150年記念ビール5種をはじめ、クラフトビールを生で楽しめます。テラス席を備え、夏にはビアガーデンやバーベキューも。音楽イベントや地域コミュニティイベントの会場としても、いつも賑わっています。


代表の町田佳路さんは、「大森の歴史や文化を表現するクラフトビール」を企画・開発し、「ビールを通じて、地域のなかで人と人をつなぐ取り組み」をエネルギッシュに展開しています。
町田さんのこだわりは「会話が生まれるビール」です。
大森駅開業150年記念ビール5種は「東京∞景」を舞台に、JR大森駅の長堀駅長、そして大森駅で働く社員の皆さんとのコミュニケーションから誕生しました。
| 【大森駅開業150年記念ビール 5種】 ・いつものとおり ・地獄谷IPA ・ジャーマン通りヴァイツェン ・大森海岸通りアンバー ・桜新道ベリーベルジャン |
このビールを通じて地域コミュニティの輪は広がり、「大森海岸通りアンバー」と「桜新道ベリーベルジャン」は、大森に拠点を置く(株)日立製作所の社員さんもコラボに参加されたそうです。
「大森は、今まで住んだどの街よりも愛着があるんです」。
そんな言葉を口にする常連さまもいらっしゃるそう。
町田さんはこう語ります。
「大森はいつも穏やかで、意地をはったり、カッコつけずに生きられる魅力的な街だと思います。東京に残る『ローカル』ですね」
「地域への愛着というものは、関わった人に対して生まれるものだと思うんです。たくさんのつながりができる店、人生が豊かになる場所を目指していますので、ぜひお気軽にお立ち寄りください!」。
【東京∞景】住所:東京都大田区山王2-2-7 八景坂ビル3階 |
大森を愛するすべての方へ。
来たる2026年6月12日(金)〜14日(日)は大森駅東口駅前広場に集合です!
「乾杯」をテーマに大森駅開業150年を記念したイベントが開催されます。
大田観光協会もブースを出店し、大森駅開業150年を盛り上げます!
ぜひ、150年の歴史を一緒にお祝いしませんか。詳しくは下記URLよりご覧ください。
・東日本旅客鉄道株式会社首都圏本部
「感謝!大森駅は開業から150年を迎えます」
https://www.jreast.co.jp/press/2026/tokyo/20260525_to01.pdf
・CLUB OMORI(クラブ大森)
https://www.club-omori.jp/
本記事のライター:Hana
プロフィール:大田区歴13年、小学生の姉妹を子育て中。大田区の魅力は知るほどに深く、気づけばすっかりトリコ。
監修:NPO法人大森まちづくりカフェ

「大森まちづくりカフェ」は情報紙の発行や地域密着型のイベント企画など、まちの魅力を発見し伝える事業を通じて、大森がもっといきいきするような交流の場(=カフェ)の構築を目指すNPO法人です。