特集
features

  • 2023.5.8
  • グルメ

馬込の素敵カフェ巡り!老舗の楡本店からテニスクラブ併設カフェまで

突然ですが、「馬池洗(まいせん)」という言葉をご存じでしょうか? これは東京都大田区中央部にある馬込・池上・洗足池の総称です。花や緑、数々の史跡に恵まれ、自然や文化、歴史に触れられる落ち着いたエリアです。

その一角を占める馬込には、とても素敵なカフェが点在しています。今回はその中でも、空間づくりやメニューにこだわりを持つカフェ3軒を巡ってみました。どんな素敵カフェとの出会いが待っているのか楽しみです!

馬込ってどんなところ?

カフェ巡りの前に、まずは馬込がどんなところなのか予習をしておきましょう。馬込は古くからある住宅街ならではの、落ち着いたたたずまいが魅力。「九十九の谷がある」といわれるほど坂の多い土地です。坂道ウォークを楽しめば、起伏に富んだ街並みが豊かな表情を見せてくれるでしょう。

豊かな緑に囲まれて、多くの寺社や史跡が点在するなど、文化の香りも豊か。大正末期から昭和初期にかけては、多くの作家や芸術家が住み、「馬込文士村」といわれたほどです。

大規模な商業施設や娯楽施設はありませんが、昔ながらの商店街を中心に個人商店が点在し、あたたかな日常が営まれています。

1953年創業! 愛され続ける老舗カフェ「楡 本店」

カフェ巡りの1軒目は、「楡(にれ) 本店」。1953年創業の老舗で、馬込エリアで特に有名なカフェのひとつです。馬込駅を出るとすぐに、堂々たるヨーロッパ風の建物が目に飛び込んできました。

外観からして、カフェというよりも「喫茶店」という表現がぴったり。70年にわたって、馬込の憩いの場・社交の場であり続けてきたというのも納得です。

店内に足を踏み入れてみると、フランスやドイツなど、ヨーロッパ各国から取り寄せたアンティークに囲まれた店内は、異国情緒とノスタルジーが共存する空間。一瞬にして、古き良き時代にタイムスリップしたかのような安らぎを覚えます。

影絵作家の藤城清治(ふじしろせいじ)氏が手がけた、幻想的なステンドグラスにもうっとりしてしまいました。

「楡 本店」が長く愛され続けているのは、なつかしさと親しみやすさ、重厚感のバランスがちょうどいいからでしょう。それを裏づけるように、2世代、3世代で来店する常連さんもいるそうです。

老舗の風格がある一方で、ここ数年はPCを持ち込んで作業される方、勉強する学生さんなども増えてきていて、客層は多様化しているとのこと。格調高い雰囲気ながら、実はケーキやランチがリーズナブルなのも、幅広い客層に支持されている理由でしょう。

そんな「楡 本店」でいただきたいのが、淹れたてのドリップコーヒーと自家製ケーキ。コーヒーは、注文を受けてから豆を挽いて、1杯1杯ていねいに淹れています。

人気のブレンドコーヒー(500円)は、創業以来変わらないブレンド。中煎りでやや酸味が強く、味の輪郭がしっかりしていながらも、重さが後を引きません。これは、コーヒー好きなら何杯でもいけちゃいますね。

コーヒーカップは、ウェッジウッドやジノリ1735(旧ブランド名はリチャード ジノリ)といったブランドの中から、お客さんの雰囲気に合わせて出しているそうで、行くたびに「今回はどんなカップと出会えるかな?」という楽しみがあります。お客さんを見ながらカップを選ぶというところにも、お店の「おもてなし」の心を感じませんか?

自家製ケーキも、ショーケースを見ているだけで心がほっこりするような顔ぶれです。

一番人気はやっぱりショートケーキ(500円)。目の詰まった弾力のある生地と、あえて空気をあまり含ませていない濃厚なクリームが織りなす王道の味わいで、ひと口食べただけで思わず「なつかしい!」と声を上げてしまいました。

ほかにも、ユニークな形のシュークリーム(450円)や香り豊かなキャラメルラムレーズン(450円)など、あたたかみあふれるケーキの数々を試してみてください。

楡 本店

所在地:東京都大田区北馬込2-32-6
アクセス:都営浅草線「馬込」駅のA3出口を出てすぐ
TEL:03-3774-0666
http://caffe1953nire.web.fc2.com/

黄色いお店の絶品カヌレ!「Cafe Andante(カフェ アンダンテ)」

南馬込の住宅街にたたずむ「Cafe Andante(カフェ アンダンテ)」は、パステルイエローの外観が目印の一軒家カフェ。2022年5月のオープン以来、栄養士の免許を持つオーナーさん手作りのスイーツが評判を呼び、1周年目を迎えた今では地域で愛される人気店となっています。

「Andante」とは音楽の速度記号のひとつで、「歩くような速さで」という意味。この店名には「散歩ついでに気軽に立ち寄ってほしい」という想いが込められているといいます。

ショーケースに並ぶのは、カヌレやチーズケーキ、ガトーショコラなど、手作りのぬくもりたっぷりの焼き菓子やパン。小さな子どもでも食べられる安全・安心なお菓子にこだわっているからこそ、わざわざ現地に足を運び、並んで購入するという神奈川県伊勢原市の「寿雀卵(じゅじゃくらん)」やきび砂糖をはじめ、使用する素材のひとつひとつにもこだわっています。

アメリカンダイナーで働いた経験や、フランスの学校で学んだ経験を持つオーナーさんお手製のスイーツは、それぞれの食文化の「いいとこどり」をしたような印象を抱かせます。

看板メニューのカヌレは、ひと口かじってみるとそのクリスピーな食感に目を見張ります。私は外がフニャっとしたカヌレに物足りなさを感じることがあるのですが、「Cafe Andante」のカヌレは、「カリカリ」というより「ガリガリ」という歯ごたえがあるのです。それでいて、中はしっとり柔らか。一般的なカヌレよりも大ぶりなので、ひとつでも食べごたえ抜群です。

チョコバナナタルトもファンの多い逸品。たっぷりの生クリームがインパクト大ですが、保存料や安定剤を使用せず、空気をたっぷりと含ませてホイップしているので、思いのほかペロリといけてしまいます。

繊細な生クリームと香り豊かなバナナと自家製カスタードクリームにチョコレートを合わせたチョコムース、塩味をきかせた生地が奏でるハーモニーは、甘味と塩味が互いを引き立てあっていて、「見事」としかいいようのないバランスのとれた味わい。「これしか買わない常連さんがいる」というのもうなずけます。



お店を切り盛りするオーナーさんとお母さま、お2人の素敵な笑顔もまた、「Cafe Andante」の魅力。「もう1周年なんだ。おめでとう」― フラッとお散歩のついでに立ち寄った常連さんとのアットホームなやり取りが似合う、陽だまりのような空間だからこそ、楽しい会話や笑顔がたくさん生まれるのでしょう。

Cafe Andante

所在地:東京都大田区南馬込4-17-4 メゾン弥生101
アクセス:都営浅草線「西馬込」駅の東口から徒歩11分
TEL:03-6451-8369
https://cafe-andante2022.com/index.html

テニスクラブ併設のオアシス「Café de Lete(カフェドレテ)」

西馬込の住宅街で、周囲の風景からすっと浮かび上がるかのような存在感を放っているのが「Café de Lete(カフェドレテ)」。2023年1月、「Lete Tennis Club(レテ テニスクラブ)」併設のカフェとしてオープンしました。

テニスクラブとカフェ、住居からなる複合施設の敷地全体を「庭」ととらえ、緑をたっぷりと設けた贅沢な空間は、「都会のオアシス」という形容がぴったり。別世界へといざなうような門をくぐる瞬間が、何ともいえないほどワクワクします。

「Café de Lete」は、「南仏の太陽のようにみなさんを照らす場でありたい」という想いから、「小さなフランス」をイメージしてつくられたそう。フランスのエスプリを感じる緑豊かな空間に身を置いていると、ここが都内であることを忘れてスローな気分に浸ってしまいます。

天気の良い日は、テラス席で緑をより身近に感じるのもいいですね。
そんな「Café de Lete」でいただけるのは、緑の野菜やハーブ、オレンジをはじめとする果物を使ったメニューの数々。フードやドリンク、スイーツからも、「南仏」や「ガーデン」のコンセプトが感じられるはずです。

ランチに人気なのが、ベビーリーフの緑が目にも鮮やかなガーデンキーマカレー(980円)。ヘルシーな雑穀米を使ったドライタイプのキーマカレーで、素材の甘みとほどよいスパイスの風味が後を引きます。

もう少し軽く食べたいときは、酸味のあるクリームと香ばしいスモークサーモンが絶妙なサンドイッチ「スモークサーモンとディルクリーム(630円)」もおすすめです。

スイーツメニューのイチオシが、白とオレンジのコントラストが目を引くクレームダンジュ(580円)。フランス発祥のチーズケーキでるクレームダンジュは、材料にフレッシュチーズを使用するのが一般的ですが、「Café de Lete」ではオーナーのこだわりで水切りヨーグルトが使われています。スプーンで口に運んでみると、ふわっふわ! ヨーグルトの酸味とオレンジのソースが相性抜群で、口の中でとろけるような食感とさわやかな味わいに思わず頬がゆるみました。

Café de Lete

所在地:東京都大田区西馬込2-26-7
アクセス:都営浅草線「西馬込」駅の南口から徒歩5分
http://lete.jp/cafe/
※支払いはキャッシュレスのみ

カフェ巡りとセットで行きたい馬込の観光スポット

せっかく馬込エリアのカフェを巡るなら、ちょっぴり通な観光スポットにも足を運んでみてはいかがでしょうか。

南馬込にある萬福寺(まんぷくじ)は、800年の歴史を持つ曹洞宗寺院。山門は23区では珍しい茅葺きで、閻魔(えんま)像を安置した閻魔堂や、鐘楼門、法隆寺の金剛仏と同一の技法といわれる阿弥陀三尊をご本尊とする本堂など、数々の文化財を有しています。

大田区の歴史や風俗について知るなら、南馬込の大田区立郷土博物館に足を運んでみましょう。旧石器時代から中世までの道具から、かつて大田区にあった農漁村の風景、大田区の近代化を物語る資料に至るまで、さまざまな展示品を通して、大田区の知られざる歴史を学ぶことができます。

文学に興味がある人は、尾﨑士郎の最晩年の旧居の書庫や客間、書斎を再現した「尾﨑士郎記念館」や、「国民之友」の創刊者として知られる徳富蘇峰の旧居を一部保存した「山王草堂記念館」を訪れてみるのもいいでしょう。

個性あふれるカフェ探訪と観光をあわせて楽しむことで、きっと奥深い馬込の魅力が見えてくるはずです。

本記事のライター:春奈

プロフィール:
大学時代に旅に目覚め、海外渡航歴はアジア・ヨーロッパを中心に61カ国。なかでも、「旧市街」「歴史地区」と呼ばれる古い町並みに目がない。旅好きが高じて、総合旅行業務取扱管理者資格を取得。現在フリーランスライターとして活動中。
これまでに和歌山県、東京都、ドイツ、福岡県、香川県での居住歴があり、大田区にも住んでいたことがある。

監修:松本里美/三好順