※画像はイメージです
「大田区で蛍を見れるって本当?」
本当です。
大森駅西口から徒歩8分の法光山 善慶寺(ぜんけいじ)では、毎年5月下旬に蛍をひっそりと公開しています。
2025年は5月25日から6月1日にかけて公開され、地域住民が初夏の風情を楽しみました。
この記事ではぜひ「夏の大森ナイトツアー」と題して、善慶寺の蛍鑑賞レポートと、蛍と併せて巡りたい魅惑の2つのスポットをご紹介します。
<モデルルート>
▶︎18時〜 山王ひらそばで夕食、手打ち蕎麦と日本酒
▶︎20時〜 善慶寺にて蛍鑑賞
▶︎20時30分〜 プラモデルCafe&Barギャラクシーにて一杯飲みながらプラモデルづくり
目次
1.まずは夕食 〜蛍鑑賞の前に、「山王ひらそば」の手打ち蕎麦と日本酒で舌鼓を
5.昭和レトロなプラモデルCafe&Bar「ギャラクシー」 〜週末の夜は、童心に帰ろう
善慶寺の蛍公開時間は毎年20-22時。ぜひ夕食を済ませてから向かいましょう。
筆者は小学生の子どもを連れて訪れました。
夕食にはぜひ、大森駅から善慶寺に向かう途中にある「山王ひらそば」をおすすめします。地元で愛される蕎麦の名店です。
手打ちの二八蕎麦。
3種類の節(魚の身を燻製したもの)をブレンドして煮出したダシに、かえし(醤油・本みりん・砂糖を合わせた調味料)と合わせた蕎麦つゆ。
一品料理。
どれをとっても絶品です!
お隣の平林酒店の直営店であり、日本酒も楽しめます。
夏場の人気は『冷やしたぬき蕎麦』、『つけとろ蕎麦』!
安曇野産の蕎麦粉を使った二八蕎麦は、毎日手打ちされています。
「蕎麦はその日の気温や湿度に合わせて打つので、毎日味が違うんです。今日だけの蕎麦をぜひ味わってください」と語るのは店主の平林功さん。
店主は独立前は人気の和食料理店に勤め、揚げ物や煮物、焼きものなど、すべての調理部門で技術を習得して料理長に抜擢された腕前。
だから何を食べても美味しいのかーーー!と、妙に納得です。
看板メニューの『だし巻き玉子』 (筆者も家族で大ファン!)
お刺身は新鮮そのもの! みずみずしいマグロに、プリップリのタコもたまりません。
わさびは安曇野産で、市販のものとは桁違いの美味しさです。
こちらは隠れ看板メニューの『あげそばがき』。
ふわふわでモチモチ、上品な揚げ具合。この食感、すっかり虜になりました。
「蛍鑑賞にピッタリなお酒がありますよ」
と店主が紹介してくださった日本酒は、『米鶴』の蛍ラベル。(写真中央)
清涼感ある爽やかな飲み口です。
信州をこよなく愛する店主夫妻は、地酒の蔵元と交流し、応援しています。
「蔵元さんの努力や想いを直接触れているので、それをお客さまに伝えたい、飲んでいただきたいといつも考えています」。
店内には蔵元の前かけがズラリ。
焼酎をオーダーした際は、お湯の代わりに栄養たっぷりの「蕎麦湯割」はいかが?
(なんて健康的なお酒の楽しみ方なのでしょう)
お料理も、店主夫妻のお人柄もすべてがあたたかく素敵なひらそばさん。
蕎麦好きも日本酒好きも、ぜひお立ち寄りください!
なお、営業時間は夜のみ、予約制での営業です。
満席の日も多いですが、店主によると「19時30分すぎは比較的空いています」とのこと。ラストオーダーは20時30分、閉店時間は21時です。
店舗情報は記事の最下部よりご確認ください。
さて、本記事のメインテーマ、蛍鑑賞レポートです。
善慶寺は東京都の指定文化財「新井宿 義民六人衆の墓」があることでも知られています。
大森郵便局を背中に向けて、右前の路地を進んだ先を進むと・・・
お寺の門が見えてきます。
建立は1292年。歴史の重みをずっしりと感じる門構えです。
蛍の鑑賞会は、この門の手前、右側にあるお庭で公開されていました。
「蛍はこちらです」と、ご院首(いんじゅ:引退した住職)があたたかく迎え入れてくださいました。
厳かな空気のなか、ドキドキしながら竹垣越しにハスの葉をよーーーく見ると…
いました!
ハスの葉の上で、ぴかぴかキラキラと輝く蛍たち!
「綺麗ーー!!!」
「なんで光るんだろう???」
人生で初めてみる蛍に子どもたちは感動しっぱなし。興奮はなかなかおさまらず、1時間ちかく蛍のそばを離れませんでした。
近隣の住民が入れ替わり立ち替わり訪れては、静かに夏の訪れを楽しんでいました。
余談ですが、筆者は蛍が大好きですが、東京に住みはじめてからは蛍鑑賞を諦めていました。
まさか、我らが大田区で見られるなんて・・・!
後日、改めて取材にうかがいました。
蛍の飼育を手がけるのは、78歳のご院首・罍慈鴻(もたい じこう)さん。
「環境問題への危機感から、環境について考えるきっかけになれば」と蛍の飼育を開始し、公開をはじめてから早14年。
毎年の公開期間は、どれだけ天候が悪くとも、レインコートを着て鑑賞者を受け入れています。
「自分が立てる限りは、この行事を続けるつもりです」とのお言葉に、強い信念を感じます。
罍慈鴻さんの生まれ故郷は静岡県伊東市。子どもの頃は初夏になると、蚊帳(かや)のなかに蛍を放って眠っていたそうです。
東京に住み始めたとき、晴れているのに青空が見えない空を目の当たりにしてショックを受けたといいます。
「1960年代の東京は大気汚染が深刻で、光化学スモックの影響で、空が灰色だったんです。故郷の青空と比べてずいぶんショックを受けたものです」。
このままではいけない。
しかし危機感と反比例するかのように、物質的な豊かさと使い捨て文化が進み、社会レベルの環境破壊が加速していきます。
せめて自分にできることはないか―――。
そう考えた罍慈鴻さんは、自身が生き物や植物が大好きなことも手伝い、「環境に敏感な蛍を、この東京で育ててみよう」、「地域の人々に公開して、少しでも環境問題について考えるきっかけを提供したい」と、この取り組みを開始したそうです。
蛍を育てるために、罍慈鴻さんはお庭で自然循環の生態系を再現。
蛍の飼育に詳しい方からアドバイスを受けながらお庭を整備し、井戸水を汲み上げて15mほどの川を作り、水をゆるやかに循環させているそうです。
「蛍は環境に敏感ですから、川の周りでは除草剤や農薬を使わないようにしています。エリア全体で環境管理する必要があります」。
「山王や池上など、昔の大田区は湧水や井戸水に恵まれた土地だったんですよ」とのお話に驚きました。
幼虫を育てるために作ったこの箱はなんとお手製!
一般のご家庭でここまでの環境を整えるのは難しいですが、「蛍を育ててみたいという企業や団体様がいたら是非お教えします」とのこと。
<※動画>
(映像提供:罍慈鴻さん)
蛍は繊細な生き物です。
罍慈鴻さんが大切に育て守ってこられた蛍たちを鑑賞させていただく際は、必ずマナーを守りましょう。
<NG事項>
・フラッシュ撮影
・蛍に触る
・持ち帰り
・鑑賞中の飲食はNG
善慶寺の他にも、大田区内では蛍を鑑賞できるスポットがあります。
洗足池の「ほたるのゆうべ」は約2000匹の蛍が放たれる鑑賞会です。
ヘイケボタルの幼虫の育成を行い、ほたるの自生化にも取り組んでいます。
時期:7月下旬頃
場所:水生植物園八つ橋
主催:公益社団法人洗足風致協会
共催:大田区青少年対策3地区委員会(雪谷・久が原・千束)
蛍鑑賞のあとは、善慶寺から徒歩3分ほどの場所にある
プラモデルCafe&Bar「ギャラクシー」へレッツゴー!
ギャラクシーは大森に店を構えて70年超、およそ3世代にわたり愛され続けているプラモデルショップです。 ガンダム・車・戦車・飛行機など、幅広いラインナップを取り揃えています。
「大森で生まれ育った自分の世代に、ギャラクシーを知らない人はいなかったんです」。
そう語るのは創業者の孫である本田貴雄さん(76歳)。
今も昔馴染みの常連客が来店し、現・店主に
「子どもの頃にお世話になったんだ」と懐かしそうに語り、お子さんやお孫さんを連れて親子三代で来る姿がみられます。
昔懐かしの憩い場が、現代にも息づいているんですね。
店内奥にはCafe&Barスペースが。
先代の店主・通称「プラモデル屋のおばちゃん」が95歳(!)のときに骨折して店に立てなくなってしまったとき、現・店主は廃業を考えていました。
「でもその前に、在庫を処分しなきゃ」と3日間だけ店を開けたところ、店内がいっぱいになるほどのお客さまが駆けつけてくださり驚いたそう。
「看板店主だった先代を労わる温かいお言葉をたくさんいただきましたし、中には親子3代で来てくださった方もいたんです。地域でここまで愛されるこのお店を潰してはいけない。その一心で、自分が店を継ぐことを決めました」。
しかしご自身はこれまでお店にノータッチだったこともあり、プラモデルのことは一切分かりません。
「それならコミュニティスペースを作って、お客さま同士でプラモデル談義で盛り上がってもらおう!」と思いつき、店内を一部改装してバーカウンターを設置し、2023年に「Cafe&Barギャラクシー」としてリスタートしました。
「私はお酒が大好きで、いつかバーをやってみたいなって思っていたので、お店と自分のやりたいことをMIXし、金曜・土曜・日曜の週末のみ営業するスタイルです」。
お酒のこだわりは「店主がお気に入りのお酒」とのこと。
「新生ギャラクシーはお客さまに恵まれており、お客さまと一緒につくっているお店なんです」。
店主のお言葉どおり、品揃えはお客さまから「これは優れものだから仕入れたらいいよ」などのアドバイスを受けてラインナップを増やしています。
また、店内にはお客さまから譲り受けた「塗装ブース」があり、エアブラシで塗装体験ができます。(利用条件あり)
当初思い描いたとおり、現在のギャラクシーは世代を超えたプラモデル好きが集うコミュニティとして盛り上がっているそうです。
「年齢差に関係なく初めてご来店されたお客様同士がプラモデル談義で盛り上がっている姿を見ると嬉しくなります」。
「リニューアルしたので、最初はちょっと入りづらいかもしれませんがお気軽にお越しくださいね。懐かしく新鮮な感覚を味わってください!」(店主)
今回は大森ナイトツアーと題し、徒歩5分圏内で巡ることができる美味しく、奥深く、そしてディープなスポットをご紹介しました。
3スポットめぐったら、大田区の夜が今よりもっと好きになるかも?
ぜひお出かけください!
最後までお読みいただきありがとうございました。
◾️日蓮宗 法光山 善慶寺
大田区山王3-22-16
https://www.h-zenkeiji.or.jp/index.html
※蛍の公開時期について
地域の掲示板よりご確認ください。
寺務に支障が出てしまうため、電話でのお問い合わせはお控えください。
◾️山王 ひらそば
大田区山王3-28-5 山王メゾンドシエル 1F
03-3772-5752
営業時間は17:30-21:00(ラストオーダーは20:30)
予約制
月曜定休
◾️プラモデルCafe&Bar ギャラクシー
大田区山王3-8-9 山王ホームズ 1F
https://x.com/galaxyplamodel
営業時間
(金)18:00-22:00
(土)15:00-21:00
(日)12:00-18:00
※祝日はお休みです
取材:2025年6月
本記事のライター:Hana
プロフィール:大田区歴13年、小学生の姉妹を子育て中。大田区の魅力は知るほどに深く、気づけばすっかりトリコ。
監修:NPO法人大森まちづくりカフェ

「大森まちづくりカフェ」は情報紙の発行や地域密着型のイベント企画など、まちの魅力を発見し伝える事業を通じて、大森がもっといきいきするような交流の場(=カフェ)の構築を目指すNPO法人です。